驚愕の足場、圧巻の操船。牟岐大島、冬の磯釣り・前編

驚愕の足場、圧巻の操船。牟岐大島、冬の磯釣り・前編

磯釣り、と聞いて何を思い浮かべるか。そもそも離島の磯場までどうやって行くか。どんな魚が居て、どのようにして釣るのか。海の幸に恵まれた牟岐の海には、連日のように釣り客がやって来る。見たことのない磯釣渡船の世界を知るため、真冬の晴れた日に牟岐大島へ行ってきた。

早朝、波しぶきをあげて船は出港する

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日の出前、牟岐町楠之浦の漁港は釣りに向かう客で賑わっている。どの人もみな、今日はどんな大物を釣ろうかと、気持ちが高ぶっている様子だ。カメラを構えていると「(釣り雑誌の)取材ですか?」と聞かれる。それほど、牟岐の海は釣りのメッカなのだろう。

 

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各々、船に乗り込む。今回乗せてもらった船は、船頭は山下美敏(やました みとし)さんの操船する「第五海漁丸」。息子さんの山下洋介(やました ようすけ)さんに取材をお願いし、この日に乗せてもらうことが出来た。

 

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ドルドルドルンと音を立てて、船は出港。船には十数人のお客さんが乗っている。エンジンと波の音が大きくて、近くの方としか会話できなかったが、深夜に徳島市から、もっとすごい人は他県から来ているというのだから驚く。ほんとに、釣りが好きなんだな。

 

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6:30頃、遠くの空が赤くなり始めた。

 

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おもむろに洋介さんが、箸の入った筒をみんなに差し出す。それぞれ一本ずつ引いて、書いてある番号を確認している。なるほど、これはくじ引きをしているのか。

 

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10分か20分くらい経っただろうか、大島に到着。それにしても、この岩。人間の手の入れる隙がない。

 

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内湾の、わずかに平坦になったところへ、船から一人降りた。

 

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そして、同じく出港して大島へ向かっていた釣り船からも一人づつ降り立つ。一体何するんだろう。「あれは、磯くじ引いてるんだ」と一人のお客さんが教えてくれる。

 

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これは、磯釣渡船組合でもらえる大島・津島の釣りマップ。牟岐の磯釣渡船には独自のルールがあり、船ごとのくじ・船の中での個人のくじで場所を決めるそう。「この方式なら、初心者でもよく釣れるポイントに当たれる」「馴染みの人でも、毎回違う場所で飽きが来ない」と、絶妙な具合のシステムが好評だとのこと。気になる磯くじの結果は、14番の「櫂投島」に決定。

 

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場所が決まると、どの船もフルスロットルなんじゃないかと思うスピードで、当たった磯へ向かっていく。先ほど釣り船の数を数えていたお客さんが「今日は9隻か。少なめだな」と言っている。1隻10人以上乗っているから、今日はざっと100人以上が大島に来ているのに、だ。そして多い時には15隻、200人を越えるらしい。

 

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櫂投島へ近づくと同時に、日が昇り始める。右に見えるのは大島で、櫂投島はすぐ近くの離れ小島だ。

 

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見えた、櫂投島。その名の由来は諸説あり、昔、大島を牟岐と日和佐の漁師が取り合い、それぞれの港から同時に出港したところ、ほぼ同時に付こうかというところで牟岐の方が、ここへ舟の櫂を投げ入れて勝った、あるいは牟岐が先に着岸したのが悔しくて、日和佐の方がやけになってこの島に櫂を投げつけた、とも言われている。という話、ぜんぶ庄野さんより教えてもらった。

 

え!?うそだろ?荒波の磯に、急接近。

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櫂投島に着くと、くじの順番でお客さんを降ろす。まずはこのお二方。荷物を舳先に運び、船が磯の中に侵入していく。さあ、どこで降りるのだろうか…と思っていると。

 

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……………………………え……!?……何と、うそだろ…………おおおッ?………何がァ!起こったッ!?

 

なんと驚くべきことに。ぽこっと海から出た、「岩」に急接近したと思うと、数秒ほどピタッと静止。その間に二人の客は船からその「岩」の上に、移動している。とても「岩場」というには心許なさすぎる、「the・岩」の上に。

 

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そしてまた、船は「岩」へ急接近。船内の道具を、数秒の間にお客さんへ手渡す洋介さん。

 

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荷物を降ろすと、また船はバックして別のポイントへ向かっていく。船からは、「the・岩」の上で平然と釣りの仕度を始めるお客さんの姿が。ものすごいところに来てしまった、と思った。釣れるといいな、というよりもどうかご無事で、と思ってしまう。「釣り始めたら夢中んなるし、これからの時間は潮が引くけん、全然平気よー。」と、お客さんや洋介さんは笑っている。

 

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その後、櫂投島のいくつかのポイント(もちろん先ほどのような場所もあった)でお客さんを降ろすと、最後に大島本土へ。

 

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また、やっと降りれるくらいの岩の上に…

 

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まず人が降り、先が刺又みたいな鉄パイプを岩の隙間に差し込み、他の釣具を受け取ってそこに引っ掛ける、というスタイルのようだ。

 

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それにしても、操船技術がものすごい。めちゃくちゃ上手い。行き過ぎたら乗り上げるし、近づかなかったらとても降りられない。実際、潮の早いところはさすがに何回かトライし直して、ピッタリの潮のタイミングを掴んで接岸している。船頭さんの腕一つで、全てが決まる世界。

 

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そして、洋介さんと共に僕も磯に降り立った。先ほどの方達とは目と鼻の先。だけど、向こうに行くすべはない。足元もななめっている。そして何より、吹き付ける冬の潮風を遮るものなどない寒さ。そんな場所で冬の磯釣りは開始された。

さあ。果たしてどんな魚が釣れるのか?僕は寒さに負けずに1日を乗りきれるのか!?後半へ続く。